何が求まるか
部品の故障率が FIT で与えられたとき、λ [1/h] と MTBF [h] への換算、および稼働時間 t における信頼度 R(t) が求まる。
前提は故障率一定(偶発故障期・指数分布)。この前提が成り立たない初期故障・摩耗故障には適用できない。
結論式
λ=FIT×10−9[1/h]
MTBF=λ1[h]
R(t)=e−λt
適用範囲と前提
- 故障率一定 λ(t)=λ、すなわち故障までの時間が指数分布に従う場合にのみ成り立つ。バスタブ曲線でいう偶発故障期に相当する。
- 初期故障期・摩耗故障期には適用できない。故障率が時間とともに変化する場合はワイブル分布などを使う。
- MTBF=1/λ は修理系の量。非修理系では MTTF(平均故障寿命)を使う。修理時間が稼働時間に対して無視できる場合、両者の数値は一致する。
- 部品の FIT 値は温度・電圧などの参照条件付きで与えられる。使用条件が異なれば λ も変わる。
計算機
入力待ち。
前提: 故障率一定(指数分布)。本文「適用範囲と前提」を参照。
導出
故障までの時間を連続確率変数 T とする。信頼度関数(その時刻まで故障しない確率)を
R(t)=Pr(T>t)
と定義する。不信頼度 F(t)=1−R(t)、故障密度 f(t)=dF/dt に対して、
時刻 t まで生き残った条件の下での瞬間故障率(ハザード率)は
λ(t)=R(t)f(t)=−R(t)1dtdR(t)
である。ここで 故障率一定 λ(t)=λ を仮定すると、
dtdR(t)=−λR(t)
という微分方程式になり、R(0)=1 の初期条件から
R(t)=e−λt
を得る。これは指数分布の生存関数にほかならない。平均故障時間は
MTTF=∫0∞R(t)dt=∫0∞e−λtdt=λ1
となる。修理系で修理時間を無視できる場合、これを MTBF として扱う。
FIT は故障率の単位であり、109 部品・時間あたりの故障数で定義される:
1 FIT=10−9 [1/h]
よって λ=FIT×10−9 [1/h]、MTBF=1/λ [h] である。
数値例
1000 FIT の部品を t=105 時間(約 11.4 年)使う場合を考える(数値は架空の丸い例)。
故障率:
λ=1000×10−9=10−6 [1/h]
MTBF:
MTBF=10−61=106 [h]≈114 年
信頼度:
R(105)=e−10−6×105=e−0.1≈0.905
つまり MTBF が 114 年ある部品でも、11.4 年の使用で約 9.5 % は故障する。
なお t=MTBF まで使うと R=e−1≈0.368 であり、6 割以上が故障している。
ありがちな誤り
- MTBF を「その時間までは壊れない時間」と読む。 実際には R(MTBF)=e−1≈37% しか生き残らない。MTBF は分布の平均であって保証時間ではない。
- 摩耗故障が支配的な部品に FIT・MTBF を適用する。 電解コンデンサや機構部品など寿命品は故障率一定の前提が崩れており、この式では扱えない。
- MTBF(修理系)と MTTF(非修理系)・寿命を混同する。 「MTBF 100 万時間」は「寿命 100 万時間」を意味しない。
- FIT の桁を取り違える。 FIT は 109 時間あたり。% /1000 h など他の故障率単位と混在させると 3〜6 桁ずれる。
- 直列系の合算を MTBF の和や平均で行う。 合算は λ の和で行う。MTBF は 1/(∑λi) であり、MTBF どうしを足しても意味がない。
出典
- JIS Z 8115:2019 ディペンダビリティ(総合信頼性)用語 — 故障率・MTBF・MTTF の定義
- 信頼性工学の標準的な教科書
更新履歴
| 版 | 日付 | 変更内容 |
|---|
| 1.0 | 2026-07-25 | 初版(ドラフト) |