EMC — エミッションとイミュニティ(伝導と放射)

EMC を「出すノイズを抑えるエミッション」と「受けても誤動作しないイミュニティ」、ノイズの伝わり方「伝導」と「放射」の 2×2 で整理し、コモンモードとディファレンシャルモード、対策の置き場所を対比する

区分用語・概念
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規格IEC 60050-161(IEV 161-01-07 電磁両立性の定義) / CISPR 25:2021(車載受信機保護のための妨害波の限度値と測定法) / ISO 11452 シリーズ(車載部品の放射電磁エネルギーに対するイミュニティ試験法) / IEC 61000-4 シリーズ(EMC の試験・測定技術)
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一文定義

EMC(Electromagnetic Compatibility、電磁両立性)は、機器が電磁環境の中で正常に動作し(イミュニティ)、かつ周囲に許容できない電磁妨害を与えない(エミッション)能力である。ノイズを「出さない」と「受けても誤動作しない」の両立を指す。

規格上の定義

国際電気技術用語集 IEC 60050-161(IEV)の 161-01-07 は、EMC を次のように定義している。

the ability of equipment or a system to function satisfactorily in its electromagnetic environment without introducing intolerable electromagnetic disturbances to anything in that environment

この一文に 2 つの要求が入っている。前半の「電磁環境の中で満足に機能する」がイミュニティ、後半の「その環境の何物にも許容できない電磁妨害を与えない」がエミッションである。どちらか一方だけでは EMC を満たさない。

似た略語が多いので、ここで整理しておく。

用語意味位置づけ
EMC(電磁両立性)出さない・受けても平気、の両立全体の目標
EMI(電磁妨害)電磁的なノイズによって妨害が起きること、またはその妨害エミッション側の現象
EMS(電磁感受性)妨害の受けやすさイミュニティの裏返し(感受性が低い=イミュニティが高い)

なぜ必要か — 発生源・結合経路・被害側

電子機器は、スイッチング電源・クロック・モータ駆動など、電流を急峻に切り替える回路をもち、これが広い周波数にわたるノイズ源になる。一方で同じ機器の中や近くには、微弱な信号を扱う受信機・センサ・通信線がある。

ノイズ問題は必ず 発生源 → 結合経路 → 被害側 の 3 要素がそろって起きる。逆に言えば、どれか 1 つを断てば防げる。

機器 A発生源機器 B被害側放射:空間を電波として伝わる伝導:電線を電流・電圧として伝わるエミッション出すノイズを抑えるイミュニティ受けても誤動作しない
図: EMC は発生源(A)・結合経路・被害側(B)の 3 要素で考える。経路は電線を伝わる伝導と、空間を伝わる放射に分かれる。A 側から見て出す量を抑えるのがエミッション、B 側から見て耐える力がイミュニティで、伝導/放射 × エミッション/イミュニティの 4 通りになる。

結合経路は大きく 伝導(電線を電流・電圧として伝わる)と 放射(空間を電波として伝わる)に分かれる(ごく近い距離では、電界や磁界を介して隣の配線に乗り移る誘導結合=クロストークもある)。「どちらの側から見るか」と「どの経路か」を組み合わせると、EMC の要求と試験は 2×2 に整理できる。

車載機器では、ノイズによる誤動作がそのまま安全に直結する。イミュニティは、安全マイコンの故障検出機構 と並ぶ「誤動作させない」ための設計要求の一つである。

2×2 で整理する

伝導(電線を伝わる)放射(空間を伝わる)
エミッション(出す量を抑える)伝導エミッション: 電源線・信号線に漏れ出すノイズの電圧・電流を測る放射エミッション: 機器やケーブルから出る電界の強さをアンテナで測る
イミュニティ(受けても誤動作しない)伝導イミュニティ: 線にノイズを注入して誤動作しないか確かめる放射イミュニティ: アンテナで電界を当てて誤動作しないか確かめる

伝導エミッション。 機器が電源線などに押し出すノイズを、擬似電源回路網(LISN / AN)を挟んで測る。擬似電源回路網は、電源側のインピーダンスを規定の値にそろえ、外部の電源から来るノイズを遮って、測りたい機器が出すノイズだけを取り出す装置である。

放射エミッション。 電波暗室などで、規定の距離に置いたアンテナと EMI 受信機(レシーバ)で電界の強さ [dBµV/m] を測る。車載部品では CISPR 25 が、同じ車両に載る受信機(ラジオ・GNSS・無線通信など)を守るための限度値と測定法を定めている。

伝導イミュニティ。 ケーブルにノイズ電流を注入し、機能を監視する。車載では、電流プローブを束線にかぶせて注入する BCI(Bulk Current Injection、ISO 11452-4)、一般機器では IEC 61000-4-6 がある。電源線に乗る過渡的な電圧(車載の ISO 7637-2、一般機器のバースト IEC 61000-4-4・サージ IEC 61000-4-5)もこの側に入る。

放射イミュニティ。 電波暗室でアンテナから規定の強さの電界を当て、機能を監視する(車載部品の ISO 11452-2、一般機器の IEC 61000-4-3)。なお静電気放電(ESD、IEC 61000-4-2 / 車載の ISO 10605)は、伝導・放射のどちらにも収まらない過渡現象として別枠で扱うことが多い。

イミュニティでは「どこまで耐えればよいか」を、試験レベル(当てるノイズの強さ)と 性能判定基準(そのとき機能がどうなれば合格か)の組で決める。IEC 61000 系の規格では、試験中も正常に動作する(A)、試験中は一時的に劣化するが自分で回復する(B)、操作やリセットで回復する(C)、のように段階を分ける。自動車向けの規格にも、同様の機能状態の分類がある。

伝導と放射の境目 — なぜ周波数で分けるのか

多くの規格は、低い周波数を伝導、高い周波数を放射で評価する。例えばマルチメディア機器のエミッション規格 CISPR 32 は、伝導を 150 kHz〜30 MHz、放射を 30 MHz 以上で規定している。

理由は ケーブルがアンテナとしてどれだけ効率よく働くか にある。導体は、長さが波長に比べて十分短いと電波をほとんど出さず、波長の 1/4 や 1/2 に近づくと効率のよいアンテナになる。

  • 30 MHz の波長は 10 m。一般的な 1〜2 m のケーブルは波長に比べて短く、ノイズは主に線の上を伝わって出ていく。だから 線の電圧・電流 で測る。
  • 周波数が上がると波長が短くなり、例えば長さ 1 m のケーブルは 75 MHz で 1/4 波長になる。ケーブル自体が放射源になるので、空間の電界 で測る。

混同されやすい概念との対比

ディファレンシャルモードとコモンモード

伝導ノイズには、電流の流れ方が異なる 2 つのモードがある。放射エミッションの原因を考えるうえで最も重要な区別である。

ディファレンシャルモード(ノーマルモード)送り側受け側往きと帰りが逆向き → 2 本が近ければ磁界はほぼ打ち消し合うコモンモード送り側受け側2 本とも同じ向き → ケーブル全体がアンテナになる浮遊容量帰りはグラウンドを戻る(大きなループ)グラウンド(車体・大地など)
図: 2 本の線を流れるノイズ電流の 2 つのモード。ディファレンシャルモードは往きと帰りで逆向きに流れる。コモンモードは 2 本とも同じ向きに流れ、浮遊容量を通ってグラウンドを帰るので電流のループが大きく、わずかな電流でも強く放射する。
観点ディファレンシャルモード(ノーマルモード)コモンモード
電流の向き2 本の線で逆向き(往きと帰り)2 本とも同じ向き
帰り道相方の線浮遊容量を通ってグラウンド(車体・大地など)
電流ループ小さい(2 本の間隔ぶん)大きい(ケーブルとグラウンドの間)
放射弱い(2 本の磁界がほぼ打ち消し合う)同じ電流でもはるかに強い(ケーブル全体がアンテナ)
主な発生原因回路本来の動作電流・スイッチング電流浮遊容量、グラウンドの電位差、配線の不平衡
主な対策X コンデンサ、ノーマルモードチョーク、ループ面積の縮小コモンモードチョーク、Y コンデンサ、シールド、グラウンド設計

遠方での放射の強さは、教科書の簡易な見積もりで次の比例関係になる(dd は観測距離)。

EDM∝IDM f2Ad,ECM∝ICM fLdE_{DM} \propto \frac{I_{DM}\, f^2 A}{d}, \qquad E_{CM} \propto \frac{I_{CM}\, f L}{d}

ディファレンシャルモードは 2 本の間隔で決まる小さなループ(面積 AA)が放射するので、周波数の 2 乗で効くものの係数がとても小さい。コモンモードはケーブル全体(長さ LL)が 1 本のアンテナとして働く。このため ケーブルからの放射エミッションの主犯はコモンモードになりやすく、ごくわずかなコモンモード電流を抑えることが対策の中心になる。

対策の置き場所 — 発生源・経路・被害側

3 要素のどこで手を打つかで整理すると、エミッション対策とイミュニティ対策の関係が見える。

置き場所主にエミッションに効く主にイミュニティに効く
発生源立ち上がり・立ち下がりを緩やかにする(高調波を減らす)、スペクトラム拡散クロック、電流ループの縮小—
経路フィルタ(コンデンサ・フェライトビーズ・コモンモードチョーク)、シールド、グラウンド設計、配線の分離(同左。経路の対策は両方向に効く)
被害側—入力フィルタ、差動伝送、ソフトウェアでの妥当性確認、誤動作時に安全側へ倒す設計

経路の対策は、出ていくノイズにも入ってくるノイズにも効く。 フィルタやシールドは向きを区別しないので、エミッションとイミュニティを同時に改善することが多い。また CAN などの 差動伝送 は、2 本に同じように乗ったノイズ(コモンモード)を受信側で差し引いて打ち消すので、イミュニティに強い。

配線設計の考え方 — 帰り電流の通り道を決める

「往きと帰りを逆向きに流す配線にすればよい」は半分正しい。電流は必ず閉じたループを作って戻ってくるので、逆向きの帰り電流そのものは、設計しなくても必ず存在する。設計で決めるべきなのは、帰り電流がどこを通るか である。原則は 2 つある。

  1. 往き路のすぐ隣に帰り路を置き、ループ面積を小さくする。 ディファレンシャルモードの放射はループ面積 AA に比例し、外から来る磁界を拾う量(イミュニティ)もループ面積に比例する。信号線と帰り線を並べる・より合わせる(ツイストペア)、基板では信号配線の真下に切れ目のないグラウンドプレーンを置く。
  2. 帰り電流を意図しない経路に逃がさない。 帰り路が遠い・細い・途切れていると、帰り電流の一部が浮遊容量や筐体・車体を通って戻る。これがコモンモード電流の正体である。

高い周波数では、帰り電流はインダクタンスが最小になる経路、つまり往き路の真下を自然に流れる。したがってグラウンドプレーンが連続していれば、ループは勝手に小さくなる。

配置の段階では、次の 2 つの定石もよく使う。

  • 敏感な線の隣にグラウンドを置く(ガード)。 帰り路が近くなってループ面積が減るうえ、隣の騒がしい線から電界で乗り移るノイズ(容量結合)をグラウンドが受け止める。微小な電圧や電荷を扱う、インピーダンスの高い線ほど効く。IC のパッドやコネクタのピンを「信号・グラウンド・信号」と並べるのも同じ理屈である。
  • 騒がしい線と敏感な線をグループに分ける(パーティショニング)。 クロックや駆動などの制御系と、微弱なアナログ信号を離してまとめる。ただし注意点が 2 つある。まとめたグループにも、すぐ近くに帰り路を用意すること(帰り路が遠いと、束全体が大きなループになる)。そして、立ち上がりの速い線(クロックなど)は同じグループのほかの線にもノイズを乗せるので、離すか隣にグラウンドを挟むこと。グループ同士が交差する場合は並走させず、直角に交差させる。

「騒がしい線」かどうかは、電圧の高さではなく電圧の変化 で決まる。容量結合で隣に乗り移る電流は i=C dV/dti = C\,dV/dt なので、一定の直流電圧はどれほど高くてもほとんど乗り移らず、大きな振幅で急峻に駆動される線が最大の発生源になる。また電圧差の大きい線どうしは絶縁のための間隔も要るので、実際の配置は電気的な理想と物理的な制約の折り合いになる。間隔を十分に取れないときは、並走する長さを短くする(クロストークは並走長にほぼ比例する)、駆動の立ち上がりを緩やかにする、受け側に RC フィルタを入れる、といった手を組み合わせる。

逆向きに流すだけでは解決しない典型例は次のとおり。

  • グラウンドプレーンの切れ目(スリット)をまたぐ配線。 帰り電流が切れ目を迂回し、大きなループができる。
  • 2 本の線の不揃い(長さ・負荷・寄生容量の差)。 ディファレンシャルモードの一部がコモンモードに変わる(モード変換)。
  • ペア全体がグラウンドに対して振れるコモンモード。 ペアの中で電流を逆向きにしても消えない。コモンモードチョーク・シールド・フィルタで別に対処する。

II-1 答案例(600字)

EMC(電磁両立性)とは、機器が電磁環境の中で満足に動作し、かつ周囲に許容できない電磁妨害を与えない能力である。前者をイミュニティ、後者をエミッションと呼び、両者の両立が求められる。ノイズ問題は発生源、結合経路、被害側の三要素がそろって生じ、経路は電線を伝わる伝導と空間を伝わる放射に分かれる。

エミッションは機器が出す妨害を限度値以下に抑える要求である。伝導エミッションは擬似電源回路網を介して電源線のノイズ電圧を、放射エミッションは電波暗室でアンテナにより電界強度を測定する。低い周波数ではケーブルが波長に比べ短く放射しにくいため伝導で、高い周波数ではケーブルが効率のよいアンテナとなるため放射で評価する。

イミュニティは外来の妨害を受けても機能を維持する要求である。伝導イミュニティは電流注入などでケーブルにノイズを加え、放射イミュニティはアンテナで電界を照射し、試験レベルと性能判定基準に基づき動作を確認する。

対策では、ケーブルからの放射の主因となるコモンモード電流の抑制が重要であり、コモンモードチョーク、シールド、グラウンド設計を用いる。車載機器では誤動作が安全に直結するため、発生源、経路、被害側の各段で対策し、設計初期から評価を組み込む必要がある。

用語メモ

本文で使った用語の平易な説明。厳密さより、本文のイメージをつかむことを優先している。

  • EMC(Electromagnetic Compatibility、電磁両立性) — 電子機器同士が「迷惑をかけず、迷惑に負けず」に同じ場所で共存できること。騒音を出さない住人であり、かつ多少の騒音があっても眠れる住人であること。
  • エミッション — 機器が外に出してしまう電磁ノイズ。自分が出す「騒音」の側。規格は「この量以下に抑えなさい」と限度値を決める。
  • イミュニティ(耐性) — 外からノイズを受けても正常に動き続ける力。「騒音の中でも会話が聞き取れる耳」の側。
  • EMI(Electromagnetic Interference、電磁妨害) — ノイズによって実際に妨害が起きること。ラジオに雑音が入る、などの現象。
  • EMS(Electromagnetic Susceptibility、電磁感受性) — ノイズの影響の受けやすさ。イミュニティの裏返しで、感受性が低いほど強い。
  • 伝導 — ノイズが電源線や信号線を「電流・電圧」として伝わっていくこと。水道管を伝わる振動のようなもの。
  • 放射 — ノイズが空間を「電波」として飛んでいくこと。線でつながっていなくても届く。
  • 結合経路 — 発生源から被害側へノイズが渡る道筋。伝導・放射のほか、近くの配線同士が電界や磁界で乗り移る誘導結合(クロストーク)がある。
  • クロストーク — 隣り合う配線の信号が、電界や磁界を介して漏れ移ること。隣の部屋の話し声が壁越しに聞こえるイメージ。
  • 擬似電源回路網(LISN / AN) — 伝導エミッションの測定で、機器と電源の間に挟む装置。電源側のインピーダンスを決まった値にそろえ、外の電源から来るノイズを遮るので、どこで測っても同じ条件で機器のノイズだけを測れる。
  • 電波暗室 — 壁が電波を吸収する材料で覆われ、外からの電波も遮った部屋。反射や外来電波に邪魔されずに、機器の放射や耐性を測れる。
  • EMI 受信機(レシーバ) — 規格で決められた帯域幅や検波方式で、ノイズの強さを周波数ごとに測る受信機。
  • dBµV・dBµV/m — 1 µV(または 1 µV/m)を基準にした電圧(電界)の dB 表示。20·log₁₀(値 / 1 µV) で、例えば 1 mV は 60 dBµV。
  • BCI(Bulk Current Injection、大電流注入法) — 束ねたケーブルに電流プローブ(クランプ型の注入用トランス)をかぶせ、ノイズ電流を流し込むイミュニティ試験。車載部品で広く使われる。
  • サージ・バースト — 電源線などに乗る短時間の異常電圧。サージは雷や大きな負荷の開閉による大きく単発の過電圧、バーストはスイッチの接点などで生じる細かいパルスの連続。
  • ESD(Electrostatic Discharge、静電気放電) — 帯電した人や物が触れた瞬間に流れる静電気。冬にドアノブで「バチッ」とくるあれで、電子機器には非常に速く大きなパルスになる。
  • 試験レベル・性能判定基準 — イミュニティ試験で「どれだけ強いノイズを当てるか」と「そのとき機器がどうなっていれば合格か」。例えば「ずっと正常」「一時的に乱れても自分で戻る」「リセットすれば戻る」のように段階を分ける。
  • ディファレンシャルモード(ノーマルモード) — 2 本の線を、往きと帰りで逆向きに流れる電流。回路が本来使っている流れ方。2 本が近いと、それぞれの作る磁界が打ち消し合うので電波は出にくい。
  • コモンモード — 2 本の線を同じ向きに流れる電流。帰り道はグラウンドを通るので、電流の輪が大きくなり、ケーブル全体がアンテナのように電波を出す。わずかな量でも厄介。
  • 浮遊容量 — 設計図には描かれていないのに、導体とグラウンドの間などに自然にできてしまう小さなコンデンサ。高い周波数ではここを通って電流が流れる。
  • グラウンド — 電位の基準となる導体。車では車体、据え置き機器では大地や筐体。コモンモード電流の帰り道になる。
  • コモンモードチョーク — 2 本の線を同じ向きに巻いたコイル。往きと帰りで逆向きの本来の電流には磁界が打ち消し合って影響せず、同じ向きのコモンモード電流だけを通しにくくする。
  • X コンデンサ・Y コンデンサ — 電源フィルタのコンデンサ。X は線と線の間に入れてディファレンシャルモードのノイズを、Y は線とグラウンドの間に入れてコモンモードのノイズを逃がす。
  • フェライトビーズ — 配線に通す小さな磁性体。高い周波数の電流だけを熱に変えて減らす。
  • シールド — 金属の覆いでノイズの出入りを遮ること。ケーブルなら編組や箔で包む。
  • スペクトラム拡散クロック — クロックの周波数をわずかに揺らし、ノイズのエネルギーを周波数方向に散らしてピークを下げる技術。総量は同じでも、限度値に対するピークが下がる。
  • 差動伝送 — 2 本の線に逆向きの信号を流し、受信側でその差をとる伝送方式。外から 2 本に同じように乗ったノイズは差をとると消えるので、ノイズに強い。CAN や Ethernet が使う。
  • 1/4 波長 — アンテナが効率よく電波を出し入れできる長さの目安。波長 λ = c/f の 1/4 で、75 MHz なら 1 m。ケーブルがこの長さに近づくと、意図せずよいアンテナになってしまう。
  • 帰り電流(リターン電流) — 往きに流れた電流が、電源側へ戻る流れ。電流は必ず輪になるので、どこかを必ず通って戻る。どこを通らせるかが EMC 設計の核心。
  • ループ面積 — 往きと帰りの電流が囲む面積。大きな輪ほど大きなアンテナになり、電波を出しやすく、外の磁界も拾いやすい。
  • ツイストペア — 2 本の線をより合わせたもの。隣り合う小さな輪の向きが交互に反転するので、出す電波も拾うノイズも打ち消し合う。CAN の配線もこれ。
  • グラウンドプレーン — 基板の 1 層をほぼ丸ごと銅で覆ったグラウンド。帰り電流が信号配線の真下を通れるので、ループが自然に小さくなる。途中に切れ目(スリット)があると、帰り電流が遠回りして効果が失われる。
  • ガード — 敏感な線の隣や周りにグラウンドの線を置いて守ること。隣から飛んでくるノイズを、先にグラウンドが受け止める「防波堤」。
  • パーティショニング — 騒がしい回路と敏感な回路を、場所を分けて配置すること。うるさい機械と静かな作業場を別の部屋に分けるイメージ。
  • 容量結合 — 近くにある 2 本の導体の間にできる小さなコンデンサを通って、電圧の変化が乗り移ること。変化が速い(周波数が高い)ほど乗り移りやすい。
  • モード変換 — 2 本の線の不揃い(長さ・負荷・寄生容量の差)によって、ディファレンシャルモードの一部がコモンモードに化けること。バランスの崩れた天秤のようなもの。

出典

  • IEC 60050-161, International Electrotechnical Vocabulary — Chapter 161: Electromagnetic compatibility(161-01-07 electromagnetic compatibility)
  • CISPR 25:2021(車載受信機保護のための妨害波の限度値と測定法)
  • ISO 11452-1:2025(車載部品のイミュニティ試験法: 一般原則と用語。-2 電波暗室法、-4 束線励起法(BCI)ほか)
  • IEC 61000-4-3:2020(放射無線周波電磁界イミュニティ試験。IEC 61000-4 シリーズの一部)
  • CISPR 32(マルチメディア機器のエミッション要求。伝導・放射の周波数範囲)
  • C. R. Paul, Introduction to Electromagnetic Compatibility, 2nd ed., Wiley, 2006(伝導と放射、コモンモードとディファレンシャルモードの放射)

更新履歴

版日付変更内容
1.02026-09-14初版(ドラフト)

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